こんにちわ。鹿児島市荒田の税理士中村です。
今回は個人事業主の方の収入に係る税負担について。法人になることでどのように変わってくるのか簡単に比較してみたいと思います。
個人事業の場合、事業主体=本人ですので、そもそも代表者に対して給与や退職金を支払うという概念がなく、事業によって生まれた利益は事業主が勝手に使っていいお金であり、基本的にそのまま超過累進税率(5%~45%)による所得税の対象となります。仮に、青色申告特別控除等を控除した後の課税所得が800万円であれば、それに対する所得税額は約120万円になります。
もしこれが給与所得の800万円であったとしたら、800万円に対して200万円の給与所得控除がありますので課税所得は600万円。その他の控除を無視したとしても、単純に計算した所得税額は約77万円。同じ事業による利益であっても、それが個人の事業所得か、会社からもらう給与所得かという違いだけで支払わなければならない税金の額が約43万円も違ってくることになります。
また、利益を全て給与とせずにその一部を会社に残すことを考えた場合でも、それに対する法人税率は23.4%(平成28年現在)以上にはなりませんので、金額に応じて税率の上がる所得税の対象になるよりはるかに有利だといえます。これらの差額は、事業規模が大きくなればなるほど顕著に拡大します。「事業がある程度の規模になったら法人化」といわれる所以です。
退職金まで考慮に入れると、その差はさらに広がります。
一般に、給与所得者が受け取る退職金には、長年の勤続に対する報奨、老後の生活保障といった性格が強いことから、その担税力の低さを考慮して税制上も通常の所得と比較して相当に優遇されています。この退職金を使えるということも会社を設立する大きなメリットです。
会社を設立して30年働き、後継者に引き継ぐ際に退職金(として)、2000万円受け取った場合で比較してみます。
個人事業ですとこれは単に事業所得の2000万円です。1800万円を超える部分に対する税率は40パーセント。仮に2000万円の課税所得であれば、税額は500万円を超えます。
これが法人から給付を受けた退職金であった場合、(詳細は省きますが)2000万円に対する課税所得は250万円。それに対する所得税額は約15万円。差額およそ485万円。課税標準ではなく、実際に支払う金額の差です。
法人成りはもちろんメリットづくしではありませんが、いろんな事で個人と法人ではこのような差が発生することが十分に考えられます。是非、ご自身のお給料と退職金についてもシミュレートされてみてはいかがでしょうか。